げーむろぐ

クリアしたゲームの備忘録。RPG/アクション/ADV/ノベルがほとんど。

あやかしびと レビュー

あやかしびと をクリア。

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タイトル画面

propeller作品やるのは初です。

概説

ブランドにもライターにも詳しくないのであらすじくらいしか書けることがありませんが…
一応、Wikiによるとジャンルとしては「学園青春恋愛伝奇バトルAVG」らしいですが、
学園と青春と恋愛でそれぞれ結構かぶってる部分ない?というのと
妖怪の存在が深く関わってくるものの所謂伝奇物とはちょっと違う気がします。
BGMとCGに片鱗は窺えるので路線変更したのかもしれない。

かつて存在した妖怪の様な能力や性癖*1を持つ人間が人妖と呼ばれ隔離・迫害される現代日本で、
その例に漏れず患者として収容されていた主人公が、純粋な妖であるすずの手を借りて脱出し、
人妖のための都市・神沢市を新天地として夢であった学生生活を謳歌するも束の間… 
と言ったストーリーです。

 

 

総評

総合評価はA。

シナリオが素晴らしいかと言われるとそれなりに、くらいなんですが
テキストの質が非常に高く、テンポよく話が進むので
のめり込むというより感心しながらやっていた感じが強いです。

刀子→トーニャ→薫→すずの順に攻略。
刀子の展開から、天と中以外の尾とそれぞれ対峙して
最後で完全体と戦う形になるのかと想像していたらそんなこともなく。
薫ルートが明らかに前座扱いで、トーニャルートは幻咬全然関係ないので
すずルートをグランドに据えてる割にシナリオの絡みは今一。

巷では漢のゲームと呼ばれているみたいですが、
親友とかライバルの様な関係の男キャラ自体はおらず師と先輩のみ。
主人公の思考の基となる出来事の中でウェイトが非常に重いというのが大きそうです。
九鬼先生に関してはその立ち位置や強さもある…というか出てきただけで存在感あり過ぎる。

基本的にノベルゲーで退屈か、ややもするとノリについていけなくなる日常パートですが、
特殊な境遇であった主人公がそれを強く望んでいる点と、
上述のテキストの質の高さで躓かずに進められるので、
キャラの魅力と合わせてギャルゲーはちょっと…の人にもオススメできるかも。
豆腐小僧(日常BGM)も良い味出してる。平穏と郷愁が良い感じに混ざってます。
(後半のストリングスの部分がちょっとRed tint*2っぽ過ぎる気もしますが)

後は村正ほどでないにしろメニューとかフォントとか諸々拘ってるのも
雰囲気作りに一役買っています。

プレイ時間は20時間ほど。ちょうどいいボリューム。

 

テキストの質の高さ

比喩表現と言葉遊びが巧みで、読んでいて楽しいです。
特に愁厳は堅物でありながらユーモアのある科白が多くて好きです。

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お気に入りをいくつか抜粋

すずの能力である言霊に関しても同じですね。
"二度と"をつけるかどうかだけでその効力が大きく変わってくるのは非常に興味深い。

ちょくちょく訓戒的な説法めいた会話も入ってきますが、
師弟関係の対比と愁厳の性格の表現に上手く取り入れているのは上手い。
この辺と捲し立てる時の擬音とかは、微妙にFateのテキストに似てますね。


各シナリオの感想

飯塚薫ルート

諒一の過去の清算がメインとなるシナリオ。
と言っても諒一が活躍するのは飯塚薫と和解するところまでで、
その先は薫本人と虎太郎先生が大活躍して中途半端に終わる。
主人公…?
虎太郎先生強すぎひん?と思いつつまぁ納得できなくもないけど、
すずルート終わった後だと九鬼先生が一奈食った理由がよくわからない。

言霊が強すぎて対策されたり使えなくされたりばっかりの中で、
唯一言霊を濫用しているシナリオだったりもする。

 

トーニャルート

本筋とまったく関係なく、トーニャの所属する組織と敵対するシナリオ。
他のシナリオでトーニャは戦闘で活躍しないので、こうせざるを得なかったのかも。
よくある主人公の仲間たちが総力でプロの戦闘集団とやり合う奴です。
メインと関係ないまま話進むし、象が来るタイミングも妹の正体も予想通りやなと思いつつ
その後の狩人の登場でちょっと持ち直した。
九鬼先生こんなでいいのかという感じが凄い。この後鬼覚醒したりしない?

 

一乃谷刀子ルート

一乃谷家と幻咬が一尾、逢難の関係を巡るシナリオ。
愁厳と刀子の関係がかなり特殊で、肉体も人格も別々にあるけどどちらかしか現界できない上に、
成人するくらいまで(?)にどちらか一方を排除しないとどちらも死ぬ。
基本的に愁厳が表に出ていたので、刀子の方は実年齢に対して精神的に未熟。
如月兄妹もまともな人間社会で過ごしていなかったのでその点は似た者同士。

という状態で死を覚悟していた刀子が生きる意味を見出してしまったところを逢難に
つけこまれて封印が解けてしまうが、逢難との対決で根本的な原因となった
牛鬼の特性を活かしているのが上手いことシナリオ組んでるなぁと感嘆しました。

ここでも主人公と九鬼先生が対立するのは変わらないんですが、
他のシナリオと立場が逆転しているのも面白いところ。
一奈が死亡する前に瀕死の重傷を負ったのと、
弟子が乗っ取られてるのを見て何か感じ入るものがあったのか。
いずれにせよ、彼がもっとも師匠らしいシナリオだと思います。

 

如月すずルート

一時的に記憶を失って、その最中に取り返しのつかないことをするのは偶に見るパターンですが、
その対処法をラストの伏線にしているのには唸りました。
ただ、尾を切る決断するのが速過ぎるのはちょっと気になる。
静珠と話したのが最後の決め手みたいな形にした方がより感動的だった様な。
…八咫鴉が幽世に連れて行ってくれたのは尾を切る決心したからの特例でもあるので難しいか。

琥森島に戻ってからの展開がちょっと速過ぎるかなという気も。
怒涛の伏線回収はいいとしても、輸送機落ちてすぐ
ラストの選択肢の場面まで飛ぶのはエピローグと見紛うばかりの急展開。
九鬼先生は流石に浮かばれない。復讐相手は強くあらねばならないという、
戦闘狂ともまた異なる妄執の果てにこれは…

ラストは個人的には幽世ENDの方が相応しいかなと思います。
尾を切った時の伏線とタイトル回収も兼ねているし、
死闘の果てに誰も辿り着けない場所で静かに暮らすのは
グッドエンドと言えないまでも悪くない終わり方。

現世に戻る方をやらないと九鬼先生と一奈がいない理由がわからないのと、
あやかしびと」の設定があやふやなので2つで1つな気もしますね。
ずっと人妖って単語が使われててあやかしびとって何やねん、
って思ってたところラストに持ってくるのは中々。

*1:本来の意味で

*2:アトラク=ナクアのBGM