げーむろぐ

クリアしたゲームの備忘録。RPG/アクション/ADV/ノベルがほとんど。

「魔法使いの夜」- 強いこだわりを感じる演出や心理描写

曲だけ知っていてリマスターが出るというので。
最近こんな感じでリマスターが出るとプレイ環境が改善されるだけでなく、やるきっかけにもなることが多いので出してくれると嬉しいですね。

タイトル画面

概要

タイトル 魔法使いの夜
開発 TYPE-MOON
ジャンル ノベル
発売日 2022/12/08(リメイク)
2012/04/12(オリジナル)
プレイ時間 約15時間
総評 A

月姫メルティブラッド空の境界で登場していた蒼崎青子の過去のエピソードを描いた作品。
焦点を蒼崎家の問題に絞っているので話自体は非常に短いが、細かい描写による肉付けによりややボリュームは控えめ、程度に収まっている。


評価

正直TYPE-MOONのまだるっこしいテキストあんまり好きではなく直前までやるか悩んでたんですが、結果から言うとやって良かったです。
一番の見どころが過去作品で青子を知っていないとそこまで高まらない気がするので、基本的にはやはりTYPE-MOON作品が好きな人向けだと思います。


また散りばめられた伏線から世界の謎を解き明かしていく様なシナリオではないので、シナリオがどうこうよりもキャラクターか雰囲気的な部分かどっちか気に入らないと厳しい気はします。
フワフワしていて話を作るのに都合が良いだけに見える設定もいくつか。


人間関係の描写

青子が外では傍若無人なのに久遠寺邸では一人相撲し続けてるのがまず面白い。
此奴が主人公であるからこそ退屈しにくい作品になっていると思います。
徹底した合理主義の様に見えてある程度体面を気にするだけの一般的な感性を持ち合わせていて、より異端である人物に対してプレイヤーの代わりに感情を爆発させて(突っ込みを入れて)くれる楽しいキャラです。
全体的に静かな雰囲気の中で1人際立っているし、俗っぽい部分もちゃんとあるしで色んな意味で良いポジション。

青子百面相


次いで草十郎と有珠の関係が独特。
特殊な生い立ちで常識が通用しないキャラと、それとは別方向に社会からかけ離れていていて寡黙なキャラの組み合わせなので、それはもう余人から推し量るのが難しいのは明らかであるわけなんですが。
特に有珠の方はプレイヤーの視点になることが少ないのも相まってどういうキャラなのか断片的にしかわからず謎な部分が多いですが、気を許してはいないものの歩み寄ろうとはしている微妙なバランスがカップ麺のエピソード等からもわかります。


この辺を丁寧に描き過ぎて進みが遅くなっている感も否めませんが、おまけ含めて全部読んでもそこまでボリュームはないのでいい塩梅だと思います。
これが50時間とかかかるようだとダレる要因にはなりますが、本作に関してはプラスになっています。


システム・演出

番外編を除き、選択肢が一切存在しません。
画面の使い方もサウンドノベル風でプレイ感覚は『ひぐらしのなく頃に』に近い。
ただ、画面の切り替えによって臨場感を出すことに関しては、よくある[キャラクターの立ち絵+画面下部にメッセージウィンドウ〕形式のビジュアルノベルと同等か、それ以上の物になっていると思います。
よくあるヤツだとどうしても立ち絵の位置がある程度固定されて、背景と切り離されて浮いている様な印象を受けることもしばしばあります。
それに対して本作はキャラクターが背景に馴染んでいて、かつ画面の切り替えやSEの入れ方にも独特の間がありお淑やかな雰囲気があります。
(処理上は恐らく似たようなことをやっているんでしょうが)
そういう意味では有珠の方が本作を体現している気もします。





以降は軽いネタバレ含むのでプレイ予定の方はご注意ください。




金狼のキャラ付け

明確なマイナス要素はこれだと思っています。
魔術に対して無敵なので出てきた後の展開を大幅に狭めているのがまず1点。
出生が不明+橙子に従ってるのも気まぐれで、シナリオを誘導する都合の良すぎる存在となっていてキャラクター性よりも舞台装置としても役割が非常に強く出ている様に見えます。
こいつがもうちょっとしっくりくるデザインをされていれば終盤はもっと予測のつかないドキドキがあったんではないかと思います。


魔法の設定

青子がどうやって根源に至ったのか?赤い影とは?みたいな部分がめちゃくちゃボカされている。
これに関しては本作だけでなく、TYPE-MOON世界共通設定っぽいので敢えてこうやってる可能性もありますが。
ただ至る道筋が重要っぽいのに、《魔法使い》の称号というか役割というか、を継承できるのが今一わからない。
魔術刻印を通じて何かしら無意識下で影響を受けている?くらいしか思いつかんですが…
(そうでなければ第三者への継承も可能なはずで、一度開いた道が閉ざされるの意味もよくわからない)







以降は重大なネタバレ含むのでプレイ済の方のみ進んでください。





アガるシーン

目次に出ちゃうのでタイトルは適当。青子が魔法を使う場面について。
前述のとおり、青子の精神世界*1で何が起こったか抽象的過ぎてさっぱりわからない状態で、『Five』という曲名からしてこのシーン専用の、私が本作を手に取るきっかけになったかっこいいBGMが流れます。
流れた瞬間は「来たか…!」と思うと共に、まだ頭の中がハテナでいっぱいの状態で「何やこれ…?何や…?」って進めていたら髪の色が変わって、一瞬ですべてを理解する最高の演出でした。

頷くことしかできないシーン

いや結局どうやって根源から引き出したかはよくわからんままですが、それを使って青子が何をしたかはわかった、という話で。
メルティブラッド触っておいて良かった。


無粋ですが、橙子は青子から情報引き出しつつ推理してたからいいにしても、有珠が一発で魔法の正体見破ってるのはどうなんですかね。
誰がどこまで知ってるかがよくわからんのは通してそうですが。


おわりに

月姫に青子がどうこう言ってますが、月姫はまだやってないです。すみません。
あと魔法陣がかっこいい。初回限定版の冊子に細かいデザイン載ってるので買ってよかった。

*1:この表現は恐らく不適切なんですが、一語で他に表せないのですみません