げーむろぐ

クリアしたゲームの備忘録。RPG/アクション/ADV/ノベルがほとんど。

「逆転裁判123 成歩堂セレクション」- 普段ADVやる人でもフレッシュに楽しめる良作

逆転裁判の1と2は配信で見てしまった後でプレイしたので書かないつもりでしたが、3が思いのほか良かったので。

タイトル画面

20年近く前に人がやっているのを見て変なゲームだなぁと思ったきり触れていませんでしたが、ADVを結構やるようになったので恐らく国内のADVとしては最も知名度が高い本作にノータッチなのはどうなのかというのと、配信で見た限り想像してたほど変なだけのゲームじゃない、というのが直接のきっかけ。
後は1回見てしまっているので隙間にやれるかなとか、BGMが結構かっこいいとか。

概要

タイトル 逆転裁判123 成歩堂セレクション
開発 カプコン
ジャンル ADV
発売日 欄外に記載
プレイ時間 合計40時間ほど
総評 A


発売日一々浚うのめんどくさくなったので公式の年表を参照。
オリジナルはそれぞれ2001,2002,2004に出ていて、GBA→DSにリメイクしたものを3本一緒にしたパッケージがiOS/Androidになって、それを3DS→Switch/PS4にリマスターした版。自分がやったのは最後のSwitch版。
評価はまとめてで個別だと前からA-、B、A+。


探偵モノ・ミステリー系のADVに法廷バトルをくっつけたゲーム。
事件を調査しつつ真相に近づいていくADVは、連続して発生する事件を追う内に「自分か近縁の人物と事件に深い関わりがある」か「背後にある巨大な陰謀を暴く」に繋がっていき自分自身が最終的なゴールである現場に登板することが多い。
対して本シリーズはあくまで1つの事件*1にフォーカスしてかき集めた証拠を基に裁判で決着をつける。
証言に沿って進行するため、推理しても勿論良いがしなくても進めることは可能。基本的には証言と証拠の矛盾を指摘して、推理が必要なのは大一番のみであることが多い。


当然、現実の裁判の様に時間をかけたり減刑を求める方針になるとゲームとして成立しないこともあり、作中に登場する被告人はほぼ犯人に仕立て上げられていて、その状態からタイトルどおり逆転して無罪を勝ち取る。
このメタ的な進行に合わせる様に司法制度が現実と乖離していて、明らかに推定無罪の逆を行き数日で有罪/無罪がまず確定してしまうことから、警察・検察の不正やミスが非常に起こりやすい状況になっている。一応この設定自体にも説明はあり、作中の治安が悪化しているせいでこのスピード感で処理していかないと追いつかない、らしい。



評価

それなりに年齢行ってる層向けである探偵モノADVに裁判要素を追加してお高くとまっていないというのがまず凄い。
これはキャラクターデザインと演出によるところが大きく、最早ギャグの領域に達しているキャラが多いのは堅苦しさとかシリアスな感じを抑えようと大げさにコミカルな雰囲気を出そうとしてのことだと思われる。
日常パートを面白おかしくするためか、「行動・言動がおかしいキャラクター」自体は大抵のテキスト系のゲーム作品に存在するが、本作のキャラクターは見た目からして奇天烈なのが多く、若干敬遠する要因にはなっているかも。
(実際に自分がしばらく触れてなかったのは最初に本土坊を見てしまったからで、探偵モノのADVやりたい人を引き込むには逆効果な一面はありそう)

本土坊薫。ここまでのイロモノは流石にそんなにいない。


2までは納得いかない部分がありつつも、矛盾を暴きつつ少しずつ真相に至っていく過程が新鮮な感覚で面白く、これだけで割と満足していたがのめり込むような面白さではなかった。
3は更に前作までの設定を生かしたストーリーになっていて、トリックに関しても過去の物をブラッシュアップしていたりと面白いのは勿論非常に丁寧に作られている。一連の話の総仕上げといった趣で、話もBGMもシリアス寄り、オバチャンもカメラマンも登場しない。
3の開廷や尋問は緊迫感あってかなりカッコイイ。


総じて、普段からADVを遊んでいる人にも新鮮さを感じられる作品。
主人公の推理を追う形ではなく証言に対する矛盾の指摘という形になる以上、自分の想定より刻みが多かったり、違ったアプローチをしていることも多い。
予想外の方向に行って考えさせられることが出てくるのがもどかしくもあり楽しい部分となっている。




1~3の比較

1は過去のスッキリしない形で解決した事件との繋がり、2はあまり一貫性がなく1の設定とシステムを流用した作品、3は綾里家に関わった人々の因縁を紐解いていく作品。
2は初代がヒットしたからとにかく続編を出そうで作られていそうな。


前述のとおりテーマ性やストーリーがなくても面白いが、3プレイ後だとどうしても比較してしまう。
1が盛り上がってくるのも、サユリさんの「DL6号事件を忘れるな」から、2はそれに乏しい上にトリックに無理があったり時間稼ぎをしないといけないシーンがあったりで、爽快感の不足でもマイナスになる要因が多く低評価。
3は話自体が面白く伏線回収がちゃんとシステムとリンクしていることと、過去作のセルフオマージュで似たトリックを昇華している点も素晴らしい。
人が飛ぶトリックとか、法廷内に存在する証拠あたり、2のサーカスで出てきた時はフィクションにしても無理があるとしか思えないが、3の最終話ではちゃんと解ける形で出てくる。
また3の最終話では、仮にこの証言通っちゃっても正当防衛ではと思いつつ、過去作で正当防衛は主張せずに完全無罪を立証する意思表明があるので、選択肢としては出てこないもののこれも踏襲している。



特徴的なパート分け

各所を移動して調査しつつアイテム(証拠)を集めてそれを要所で使う、骨子の部分に関しては昔ながらのADVと同様。
証拠を集めるパート(探偵)と使うパート(法廷)が完全に分かれているのが特徴的。


探偵パートでは必要な証拠を回収しきると自動的に法廷パートに移動するため、「そもそも今の手持ちで対処可能な状況かわからない」ことがほとんど*2ない。
これにより詰みセーブが発生しにくくなっており、念のための総ざらいの様な操作も必要ないためテンポも良く遊びやすい。
ただ難易度が低いかと言われるとそうでもなく… 次項に続く。



難易度

1はリメイク版の追加分を除き今の自分がやって簡単に感じるくらい、2以降は結構難しい。
小中学生くらいの時にやってたらクリアできなそうな気も。


1の蘇る逆転は難しいというよりやりにくい。これはDSでリメイクした際に諸々追加された操作手法と、過去の事件とリンクしていることが原因。
(壺を見る角度を調整する操作だけは流石にちょっといい加減にしろよとはなった)
2は難しいというより局所的に理不尽な部分がある。総当たりに対する露骨なペナルティや、無理があるトリック、明らかにミスを誘っているダミーと正直楽しくない難しさ。
前作で楽できてた部分を潰した上で調整間違ってそうな箇所がある、世界樹の迷宮シリーズの2と似たようなポジション。
3は全体的に難しく、ちゃんと「してやられた」となる難しさで完成度が高い。
1つのことを言ってる証言が2~3に跨って、つきつけるタイミングどこでもいいだろみたいな感じでペナルティくらったりするのはまぁしょうがない。


2で変わったわかりやすい要因としてはサイコ・ロックが真っ先に浮かぶが、難しくなっているのは主に法廷パートでこれはあまり関係ない。
大きな要因としては「ゆさぶりの仕様変更」と「消去法でしか解けない選択肢の増加」辺り。前者はどういうことかというと、
①証言が1~5あったとして、1→5→1とゆさぶると内容が変わるパターンの出現
②ゆさぶった後に、1:もう少し突っ込んでみる、2:ここでやめておく、3:別のことについて聞いてみる、の様な選択肢が出ることがあり、通常1だが2,3を選ばないと進めないケースが出てくるようになった
要は1回通り過ぎたはずのテキストをもう1回読もうとしないといけないパターンが増えた。
こういうのがあるとわかっていないと、まだ無理だよなと思いながら既読部分だけでつきつけを考え始めてしまうのでハマりがち。

穿った見方をし始めるとこんなんでも悩む様に。

サイコ・ロック

2からの新システム。
法廷パートに進んだ時点で既に証拠は揃っている前提のため、前述の「そもそも今の手持ちで対処可能な状況かわからない」状況を作り出すかの如く、基本的に初回遭遇時には解除できない様になっている。
法廷パートのつきつけと同じく不正解の場合はダメージを受けるため、人によってはただ証拠集めるだけになりかねない探偵パートに刺激を持たせる役割を果たす。


ただ、結局サイコ・ロック以外の調査を全部やれば自然と解けるようにはなっているというのと、2個以上ある場合は実質ノーリスクになる。
そこまで緊張感があるかと言われると微妙なところ。
解除自体が楽しいのと不安を煽る演出は上手い。

会話の途中で突然BGMが止まり画面が暗転、錠前が1~5個出現して解除モードに移る。

おまけ

霊媒はアリ?ナシ?

降霊術の一種で、死人の魂を自らに宿らせる術者が作中に存在する。所謂イタコ。
何故か魂の持ち主の肉体も再現し、それに合わせて衣服や装飾品も変化してしまう。まぁフィクションなので…
主人公が諦めかけた時に今は亡き先輩が出てきてアシストする使われ方が多いが、これがトリックとして登場する話も。


オカルティックではあるものの肉体まで変わる上に制限がそれなりにあり、要するに「一時的な入れ替わり」なので個人的にはアリ。
トリックとして出てくる話でも、誰が誰を霊媒したかしてないか、が真相の伏線として機能しているのも〇。
これが術者の肉体を借りて喋るだけとかだと外から判断しようがなく、証言が重要なゲームなのに言ったもん勝ちになってしまうため、むしろこれで良かった。


ゴーストとかアンデッドが出てくる推理小説も読んだこともあるが、フィクションの存在に明確なルールや定義があって推理可能な状態になっていれば問題ない派。
それこそ魔法が出てきても一定の制限の下で行使できて手がかりが残るのであれば無問題。
プレイヤー視点の人物の見えているものがおかしいとか、コロコロ人格が入れ替わってるとかも見てきたので感覚おかしくなってる可能性は否めないが。

*1:過去の解決済み事件と関わりがあったり、別件を調査中に本命に変わったりするケースは存在する

*2:稀に今ある証拠で矛盾を立証できるか選択肢が出てきて、できるか怪しい場合でもハッタリを通すのか引き下がるのかを迫られるシーンはある