げーむろぐ

クリアしたゲームの備忘録。RPG/アクション/ADV/ノベルがほとんど。

シンフォニック=レイン レビュー

シンフォニック=レインをクリアしました。
存在自体は13年ほど前から知っていて、
この度Nintendo Switchに移植されてセールしていたのでやってみました。

www.kogado.com


総合評価はA。
楽曲は素晴らしいが音ゲー部分が足を引っ張っている珍しいパターン。
シナリオと歌詞が密接に結びついているので、
歌が本体というのが本当に過言ではありません。
プレイ時間は20時間ほど、ちょうどいいボリュームです。

 

 

総評

延々と雨が降り続く音楽の街ピオーヴァを舞台に、
音楽学院に在籍するクリスが故郷にいる恋人と想いつつも、
結ばれるジンクスがあるという卒業演奏のパートナー探しを
余儀なくされているところから始まります。

派手な演出や盛り上がる展開は控えめですが、
その分キャラクターの心情描写が丁寧。
音楽の街を舞台にしているところからもわかるように、
楽曲に非常に力を入れています。
優しいメロディーラインだけでなく、
水音の効果音を使ったりしていて独特な良さがあります。
(作曲者の方の遺作となってしまっているようです。合掌)

卒業演奏の練習と本番で音ゲーパートがありますが、
各キャラに劇中で1曲、エンディングで1曲なので
練習が多いキャラクターは何回もやらされるので結構しんどいです。
疲れたり難しかったら難易度を下げてしまうのが吉。
(使用キーが減るだけで譜面自体は変わりませんが)


以下、各シナリオ毎にキャラクター紹介と合わせて書いていきます。


トルティニタ・フィーネ

クリスの幼馴染であり、アリエッタの双子の妹。
幼少期はいつも3人一緒だったのが成長とともに各々の関係や居場所が
決まっていく中で、身を引いたが心の底では諦めきれていない、と言った
ある意味テンプレとも言える姉妹の三角関係を背景にストーリーが展開される。

…んですが、当のアリエッタとトルティニタが直接会話するシーンがなく、
姉妹が完全にお互いの情報を共有しているかのような論調で
クリスをからかうようなシーンまであるため、
ドロドロした関係を予想していると肩透かしを食らいます。
クリスの苦悩は描かれているし、双子姉妹ならではの演出もありますが、
このルートではすべては明かされません。
実質的にはal fineの伏線展開のための出題編の様な構成になっています。

 


ファルシータ・フォーセット


学院の生徒会長。
孤児院出身でありながら実力で現在の地位を手にしており、
能力や肩書目当てに接触してくる者が多かったため、
利用しつつされつつを人間関係の基本とする価値観を持つ。
クリスとの関係においてもそれは例外ではない。

このルートは終盤にクリスが大きくショックを受けたり、
肉体関係を仄めかす描写があったり、そもそもグッドエンディングで
あるのか疑問であったりで中々肯定的に捉えることが難しいですが、
このルートも最終章に繋がる伏線であると見れます。
表現したかったのは能力主義の厳しさやらではなく、
フォルテールという楽器がどのような特性を持っているか、
というところにあります。

ファルシータやコーデル先生の弁によると、
フォルテールに込める魔力とは感情の発露、との一説があり、
幸福のみならず悲しみの感情を爆発させることでも人を魅了する音になる。
(恐らくは怒りや恐怖といった感情でもそれは同じ、
また感情のベクトルが偏り過ぎると好き嫌いが分かれてしまう)
エンディングの後も、クリスの音(魔力)はファルシータによって
引退するまで管理される、と考えると中々恐ろしい話ではありますが…


本人の性格も恐らく関係していると思われる仕様で、
(シナリオが進行するまではファルシータの方がクリスを見定めている状態)
音ゲー部分のスコアが低いとあっさりを見切りをつけられます。
譜面自体の難易度が1番高いこともあり、3人中最難となっているため、
難しい場合はEASY推奨。


リセルシア・チェザリーニ


引っ込み思案な1年生の生徒。
ある理由から人前で歌うことができず、
旧校舎で歌っていたところをクリスに見つかり親睦を深めていくこととなる。
声楽科としての活動がほとんど見られないが、彼女の複雑な家庭関係に起因している。

このルートは、他とあまりリンクせず単体で完成しているシナリオとなっています。
キャラクターの性格的にも話構成的にもアクが強い他2人と異なり、
素直な性格をしていて、明確な目標と障害があるため話の構成もわかりやすい。
伏線の使い方も無理がなく、ラストの展開を除くとお手本のようなシナリオになっています。
(この辺りは、直近にやった作品では一ノ瀬ことみのシナリオと立ち位置が似ている)

また、諸々の要因があり音ゲーパートが少な目であるのと、
練習曲であるリセエンヌの曲調も明るめであり取っつきやすい。
他2人をやってこのゲームの評価に疑問を感じたらやってみて欲しい。

 

 

***ここから先はネタバレ要素をさらに多く含みます***

 

 

al fine


トルティニタルートを彼女の視点でなぞっていくシナリオとなっている。
基本的にはクリスのおかれている状況を、トルティニタの心情を交えつつ解説していく
形をとっていて、選択肢と音ゲーパートもほとんど削られているが、
シナリオ分岐は存在し元のシナリオそのままの結末とならない終わり方にもなる。

トルティニアのシナリオで違和感を抱いていたプレイヤーに爆弾を投下するシナリオです。
…まぁ一卵性双生児であるからして入れ替わりは鉄板としても、
手紙の件とかパン作りの件とかは並々ならぬ覚悟を感じます。
登場人物らがクリスのことをどう思っているかが明確に科白として見えるため、
ここまで没個性的だったのが主人公らしくなっていきます。
(リセルシアのシナリオでは自分から動くことが多いですが、
相対的にそうならざるを得ないというのと、グラーヴェへの怒りがあるため)

人間的な成長という面から見ても本シナリオが最上ですが、
あくまでトルティニタ視点なのでTrueシナリオかと言われると難しい。


最終シナリオ


所謂フォーニルート。
クリスがアリエッタのことを自力で思い出して、
他のシナリオでは逝去するアリエッタが奇跡的に目覚める。

唯一の純粋なハッピーエンドとなっているシナリオで、
唐突な展開も多いためご都合主義に過ぎるともとれます。
個人的には最後を気持ちよく終わらせてくれるのは歓迎ですが、
フォーニの正体があまりにも不明瞭。

クリスが自分の精神を守るために生み出した幻、
というのがal fine終了時点での自分の予想でしたが、
歌声は他の人にも聴こえるようなのでこれは違いそう。
(無理やり解釈すれば、フォーニがいると思い込んでるクリスの魔力が
フォルテールに乗って歌声もセットになった、の様な観方もできますが)
かといってアリエッタの意志(遺志)そのものというわけでないので、
アリエッタの願いの具象化、みたいなところに落ち着くわけですが、
かなり曖昧な存在でどうにも。

最もクリスが音楽を楽しんでいて、
事故がなければ本来収まったであろうラストにはなっているので
やっていて楽しくはありますが、俯瞰した時にちょっと粗が目立つなぁ、という感想です。

 

 

終わりに

音楽が好きな人はもちろん、そうでない人でもノベルゲームをやる人であれば
やってみて欲しい一作です。

惜しむらくは関連CDが軒並み高騰してしまっていることでしょうか。
このゲームに関してはこれが本当に痛いです。