げーむろぐ

クリアしたゲームの備忘録。RPG/アクション/ADV/ノベルがほとんど。

この青空に約束を レビュー

2006年に戯画から発売されたゲーム、この青空に約束を、をクリアしました。

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また随分と古いゲームをやっていますがこれも大分前から存在自体は知っていて、
KOTOKOの曲色々聴いてたらallegrettoにハマってからのプレイになりました。

 

総評

総合評価はA。
シナリオは期待しすぎて若干肩透かし感がありましたが、
システム周りと主題歌以外のBGMも良かったのでこの評価。
疑似的な家族の様な共同体が好きな人にはお勧めできます。
プレイ時間は20時間くらい。あまり重めの展開になることはなくサックリ終わります。

概要

本州から南にある離島、南栄生島。
大企業の宇宙開発による進出によって栄えてきたが、事業の撤退により
過疎化が進んでいた。主人公・星野航が生活する学生寮・つぐみ寮も定員割れとなり、
来年度に廃寮が決定してしまう。
そんな状況の中、やさぐれた転校生・沢城凛奈が入寮してきて、航が凛奈に
最高に思い出を残してやることを決意するところからストーリーが始まります。

最初の1/3は凛奈との和解が大部分を占めて、
キャラ毎のイベントはエピソードを交えてのキャラ紹介の様な形。
次の1/3が夏休みで各キャラそれぞれのイベントが本格的に始動、
最後の1/3が個別シナリオの構成になっています。
メインヒロインが幼馴染と転校生の王道パターン。

イベント選択画面の作りが中々丁寧で、特に意識しなくても100%回収が容易、
且つ見直しがしやすい作りになっていて
ただ選択肢を出していくだけのノベルゲーは見習ってほしいと思います。
BGMの出来も非常に良く、印象的なシーンで流れる「約束のブーケ」や
「もうひとつの青空」は言わずもがな、主人公がギターやハーモニカを
演奏しているシーンからか、ストレートなメロディが心に沁みる。
「風のアルペジオ」や「春を待つ少女のように」も素晴らしいです。
イベント選択画面の「TSUGUMI SEVEN」も無限に聴いていられます。

 


個別シナリオの感想

沢城凛奈

転校生。メインヒロインその一。声が良い。
父親と暮らす予定であったが、来島日に愛人と鉢合わせしてしまい
そのまま飛び出して入寮する。期待を裏切られたことに対する気持ちと、
1年後に寮が取り壊されることを知り、島の人間と深く関わらないことを決め込む。

打ち解けるまでを共通シナリオで消化してしまうので、
個別部分はほぼラブラブな感じで進む。
なんやこのバカップル…みたいな感じになることも多いが、
合わせ石の真相の辺りはお互いの意志の強さというか愛の強さを感じる良い展開。
序盤もほとんど凛奈ルートみたいな物なのでこっちで書いてしまうと、
突っ張ってたキャラが良い意味で馬鹿な連中に解されていくのがとても気持ちいい。


羽山海己

幼馴染。メインヒロインその二。
過去に母親と幼馴染を失う事件があって以来、
一度築いた関係が崩れることを病的に恐れている。

甲斐甲斐しく航の面倒を見るが、男女の仲となることで
他の人間関係が変わることを恐れて一定の距離を保っている。
その割には、他のヒロインと航がくっつくことに対しては寛容だが…
トラウマの重さでは今作一、航が行動を起こして二人で乗り越えていく形を
取っているのは非常に良い。
ただ、親族を納得させる描写がもうちょっと欲しかったかな、という印象。
じいちゃんと海己パパの会話するシーンで十分と言えなくもないので難しいところ。

ちなみに、このシナリオを攻略しないと現地人である航が何故寮生活を
しているかは不明なまま。この辺りは流石に幼馴染特権といったところか。


浅倉奈緒

生徒会長。表と裏の顔を使い分ける才色兼備。
寮長を差し置いて実質的なリーダーとして君臨する。

この役割のキャラとしては珍しく、主人公の元カノ…とまでは言えないが
過去に一悶着ありややこしい関係。一つ屋根の下で過ごすことになる際に
色々とルールを設けて、それを遵守していくことで上手く関係を取り繕ってきたが
それ故にお互い正直になれなくなってしまっていたところに、
以前奈緒子が好意を寄せていた相手がやって来て…

という形で話が進んでいくが、航が主体的に動く場面があまりなく
終始振り回されてしまっている。どこが見所なのかが正直よくわからなかったが、
エピローグの指示語だけの会話は信頼関係の表現として上手い。

この人は自分のルートより他キャラでサブとして出てくる時に、
そのキャラを導く役割で輝いていることが多いのでそちらの方が印象に残る。
海己、静のシナリオでそれが顕著。


藤村静

不思議っ子且つ家出娘。ある意味で凛奈の先輩に当たる。

共通部分では不思議系少女であり掴みどころがないが、
個別部分では島を離れる前に関係を修復したい両親との間で葛藤することに。
…と言っても葛藤するのは航(とさえちゃん)で、本人は戻る気ゼロ。
疑似的な家族と本物の家族の間で揺れ動くのは比較的よく見る展開だが、
結論を出した航と決裂した静を皆で説得するシーンはとても温かく、名場面。


桐島沙衣里

名目上の寮長兼、航の担任教師。

この手の作品で年長キャラのシナリオは少し外れた趣旨となることが多く、
期待はしていなかったのですが教員の立場を活かした立ち回りをしてくれた。

他のシナリオとの最大の違いは、建部と吉倉以外はほぼ出番がなかった
教師陣が勢揃いするところ(全員にグラフィック用意してあるとは思わなかった)。
教師陣も個人個人の考え方があり、擁護派VS退学派の様な形にはならずに
沙衣里が感情に訴えかけるだけではなく過去の事例を引き出して来たりした結果、
各々が妥当な落としどころとして処分を決めた形となっているのが非常に良い。


六条宮穂

名目上の理事長。半分静の保護者。

作中でも言及されているように、小泉八雲のような祖父を持ち
その生涯に感化されて恋慕の情を育んでいくが、
当の宮穂は淡い夏休みの思い出と割り切っており…

正直なところ、最も無味乾燥なシナリオ。
本作のテーマとキャラ個別のテーマが上手く噛み合っていない。
お嬢様キャラ故に外面では知り合いが多くとも、
内面的には孤独であった、みたいなわけでもなく。


三田村茜

茜シナリオというよりも、つぐみ寮ヒロインとくっつかずに
約束の日を迎えた後の航がどうなるかのifシナリオ。

蛇足。
そもそも今年度いっぱいでつぐみ寮の取り壊しはもう決定事項で、
それに関してはとっくに覚悟を決めていたはず。
それを早めようとする学園長側との対立はあれど、
存続しているのは海己シナリオのみであるはずで
それで航がここまで無気力になってしまうのは流石に…