げーむろぐ

クリアしたゲームの備忘録。RPG/アクション/ADV/ノベルがほとんど。

Re:LieF ~親愛なるあなたへ~ レビュー

今回のゲームは「Re:LieF ~親愛なるあなたへ~」です。

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デザインに拘りを感じるタイトル画面

TrymenTのビジュアルとキャッチコピーに惹かれて着手したところ、
本作がサントラ付きで再販されたとの情報をキャッチ。
ネタバレを踏まない程度に調べても繋がりがわからず、
発売順にやれば間違いないと踏んでこっちを先にやることに。
(次かその次くらいにTrymenTをやるので、どう繋がってるかはそちらで)

概要

タイトル Re:LieF ~親愛なるあなたへ~
ブランド RASK
ジャンル もう一度学園生活を送るADV(ノベル)
機種 PC
発売日 2016/10/28(Re:EditioNが2020/09/25)
傾向 あまり上手く行ってない社会人向け
プレイ時間 約15時間
総評 A
その他 好き嫌いがハッキリ分かれそう

「試してみるんだ、もう一度」のキャッチコピー通り、
現状に満足していない人、挫折や苦難の末に社会からはじき出された人を集めて
社会復帰へと導くプログラム「トライメント計画」が舞台となっています。
"二度目の奇妙なモラトリアム"と作中で表現されている様に、
基本的に登場人物は(元)社会人で、本作のターゲットも同様かと。

グランドルートでは更生しつつある主人公たちが不思議な現象を目の当たりにして、
この計画に隠された真相に近づいていくことになります。

評価

総合評価

演出の弱さや伏線の扱いなど気になる点はあれど、
強いメッセージ性と複雑な世界設定を両立させている名作です。
自分は刺さったので総合評価はAとしましたが、人によっては凡作かも。

これより先はネタバレ注意です。

強いメッセージ性

概要にも記載した通り、社会に上手く馴染めなかった人か、
少なくともそういう人たちの心情を理解できる人向け。
キャッチコピーの他にも同じ言い回しを意図的に多く用いてこれを補強していて、
刺さらない人が見ると鬱陶しく感じることもありそうな。
これが刺さる人とそうでない人でかなり評価は変わりそうです。

複雑な世界設定

仮想世界だけであれば比較的ありふれた設定ではありますが、
プログラムとして現実にある島を模して参加者以外はAIで補うという発想は見事。
なんですが後述の伏線問題でマジか!とあまりならないのが残念。

演出面

所謂泣きゲーのように、感情を爆発させた科白や盛り上げるBGMが皆無。
これに関しては、登場人物とターゲット層の年齢から落ち着いた雰囲気に
しているんだと思ってはいます。が、後述する伏線の件もあって
感情が大きく揺さぶられるタイミングがほとんど存在しないのが勿体ない。
オープニングを入れるタイミングは見事ではあるし、
デイジーベルのシーンとかは引き込まれるがそれくらい。

伏線の張り過ぎ

AIの話がかなり早い段階から出てくるのは根幹に絡むからいいとして、
現実世界でないことの伏線は流石にやりすぎじゃないですかね…
パッと思いつくだけでも、

  • 無人の第2地区
  • アイの部屋の仕掛け
  • 散らない桜(キャラに説明させる必要はない)
  • ネットの遮断
  • ももルートの調査
  • 御雲島の由来がクラウドっぽい

2~3個くらい気付いたらもしかして、となるので人によっては共通部分で気付きそう。
個人的には真相明かされる直前まで確証持てないレベルにしておいて欲しかった。

感想

日向子→流花→もも→アイ(グランド)と順に攻略。
流花とももは設定の補強とこういう風に社会から外れる人も
いるというケースの紹介みたいな感じで、メインは日向子とアイです。
終わり方を意識して合わせている節があるし、
視点の切り替えやキャラクター設定からしても
日向子がもう1人の主人公と考えるべきかと。

日向子ルート

「選択」がテーマ。
何事も卒なくこなせるようになってしまっているのと、
倒れてからのブランクがあって経験に乏しいために
弱い自分を偽っていた仮面が徐々に剥がれていく流れは非常に良いです。

5人の中で最も意志が弱そうな日向子に自分を重ねて
安心してしまっているにも人間臭くてグッド。

後は理人の発言もテーマに沿っていて感服しました。
趣味人が「やりたいこと」と「できること」の間でどうバランスを取るかは
社会の歯車として生きる上での永遠の課題と言える。

ラストが超展開気味で終わるのが気になるところですが…
ミリャの正体がハッキリしないことには何とも言えない。

エピローグもいいですね。逆で終わるストーリーは散見されますが、
再スタートを切ったからこその終わり方。

流花ルート

日向子の方とは異なり、こっちは司の葛藤はあまりなく流花の成長がメイン。
テーマとしては「変化」になるでしょうか。

前職での経験や得意分野で司に負けたことも受け入れて、
新しい技術の吸収や柔軟な思考ができるようになって
ワーカホリックな生き方から解放されていく。

のはいいんですが、司が流花の引き立て役にしかなっていない。
過去を思い出したのもAI絡みで母親の情報から連鎖的にという感じで、
過去の自分と向き合った結果ではなさそうなので違和感がある。
本作にAIが深く関わっている伏線にシナリオ1本丸ごと使ったといえばそれまでですが。

ももルート

まず疑問なのが、このシナリオは必要だったのかということ。
自主制作側に来るのがこれだけなので理人やももが何をやっているかが
見えるのと、感情を持ったAIの問題が少し絡んでくるくらい。

島民が生身の人間でないことがほぼ確定するが、
むしろ濁しておいた方が良かった様な気もする。

司が成長している様子がほとんど見られないし、
シーンの後からの展開が急過ぎるし投げっぱなしだしで何だかなぁ。
というか最後はももがどうにか事態を解決したけど
司を回復させるには至らずにトトを送り込んでると思うので、
ユウが消されている可能性まであってちょっと受け入れがたい。
(仮想世界でトトを消したのは恐らくユウ)

グランドルート

他ヒロインの個別ではとんと姿を見せなかった学園外シスターズが表舞台に登場。
交錯する2人の思惑の中で、司は自身の過去と向き合い乗り越えていく。

司は既に亡くなっていて、似せて作らせたAIが御雲島の司だと思っていたら
流石にそこまでSFではなかった模様。ここは叙述トリック*1を上手く使っている。

ユウは人間社会そのものを嫌悪しているので司を外に出したくない。
死んでいると告げたり、交通事故を再現したり大分過激ですが、
"当時の司"と御雲島の中で過ごすことが目的だったので理に適ってはいるか。
司の虐め問題だけでなく、トライメント計画を運用していく中で
様々なケースを見て絶望したパターン。作品と権力によっちゃ世界を滅ぼしかねない。
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一方アイは、司が自らの意志で過去を乗り越える必要があると主張。
これは恐らく、日向子と会っている様に個人に接して心境の変化を直に感じているからで、
全体の管理者として個人を見ていないユウとの対比は面白い。
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司が現実世界で回復しているのはこのルートだけ。*2
アイの尽力もありますが、決定的なのはユウとの二重奏で努力の成果を発揮できたことと、
約束を果たせたことにあると思うので納得のエンディングです。

後はユウがデイジーベル唄うシーンが非常に印象的。
本作のグラフィック水準で夕焼けの水平線と透き通る様な歌声で残らないわけがないとも言える。
この曲自体は知りませんでした…不勉強です。
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考察

最後が大文字なのは?

真っ先に思い浮かぶのはアイの存在。
I=アイ=AIでAIが感情というか自己認識を持つことと、
単純にAI絡みの話であることの伏線を最序盤から張っていると。

後は、間の小文字は御雲島の中で現実ではないから?

ユウは何故コピーを作ったか?

司を"治療"するに当たって、自分とは異なる経験を積んだAIが必要と判断した?
司に入れ込み過ぎているとの自覚と外の世界の情報が足りな過ぎるという
認識は持っていると思うので、間違っていないとは思うが正解とも言えなそう。

司の夢に紗希が出てきたのは何故か?

これはそもそもミリャが何者なのか?という疑問に起因する問題で、
日向子と知己の三国紗希という少女と同一人物であるところまでしかわかっていない。
そもそもどっちが本名なのか?とか、日向子と別れてから喋れなくなってるのは何故か?
とか色々とわからないことだらけ。

司と何も関わりもなく夢に出て来はしないし、日向子ルートの最後で御雲島の仕組みを
知ってそうな雰囲気であることからLieF関係者であることは確かだがそこから先は…
TrymenTで方で色々わかりそうなので一旦置いておきます。

*1:と言っても死んだと明言しているので反則気味だが

*2:日向子ルートは微妙だが、流花とももは確実