げーむろぐ

クリアしたゲームの備忘録。RPG/アクション/ADV/ノベルがほとんど。

「AMBITIOUS MISSION」― 時間の概念を巧みに取り入れたシナリオは見事だが、泣きゲーとしては今一つ

個人的昨年No.1ノベルゲームだった金色ラブリッチェと制作繋がりでプレイ。
cross-claymore.hatenablog.com

金色ラブリッチェとの比較を書いている部分が多いです。
(知らんがなって人はすみません)
あっちのネタバレはしていないのでその点はご安心を。

タイトル画面

根幹のテーマや全体から見た各シナリオの役割、
伏線の巧みさ等諸々金色ラブリッチェと似通っていますが、
雰囲気は大きく異なるので好みは分かれると思います。

金融・投資の仕組みを理解しないと話についていけない部分がありますが、
本編中でその辺も全部説明してくれているので知識ゼロでも何とかなります。


概要

タイトル AMBITIOUS MISSION
アンビシャスミッション(アンミツ)
開発 SAGA PLANETS
ジャンル ビジュアルノベル
発売日 2022/05/27
プレイ時間 約21時間
総評 A-

『怪盗』としての活動を続けていく中で、『盗人』や『時間泥棒』との邂逅を経て
自らの生い立ちや在り方に迫っていくお話です。…とかなり抽象的な書き方をしていますが、
『盗む』という行為を所有物の所在を移すという意味以外でも人に対して使用していて、
人を驚かせることをため息を盗むと表現したり、
人の成果を奪うことを時間を盗むと表現したりしています。


この『時間』の捉え方が独特で、それ単体では扱わず
「その時間で培ってきたもの」という扱いをされることが多いです。
時間というのは人間が作りだした概念であり実体はないので、
時間*1に干渉する行為は厳密にいうとそう見えるだけ、
というややこしいパラドックスがあるんですが、
これの解釈を『時間泥棒』を引き合いに出してわかりやすくしている、
といった感じでしょうか。



評価

メッセージ性の強さと伏線の巧みさは相変わらず素晴らしく、
その点では間違いなくオススメできる作品ではあるんですが、
コメディ要素の強いというかしつこいのと、演出が若干弱いと感じました。


金色ラブリッチェはゴリッゴリの感動路線だったのに対し、
こちらはフォローこそ手厚いものの小難しい話をテーマに絡めていることもあり
泣きゲーをやりたいというのであれば有力な選択肢ではないかもしれません。
あっちは「湖に沈んでいく夕焼け」のシーンのインパクトがあまりにも強く、
それがそのままグランドルートの象徴でもあったので引き込まれ方が凄かったんですが、
こちらは同じポジションのシーンが「高所から一望する街」なので少々地味です。
街そのものを巡る話でもあり、ミッドナイトの始まりでもある場所なので
納得は納得なんですが… これは比較相手が悪すぎる。


また本作は明確に敵対するキャラクターが存在しているんですが、
その真の目的自体はどちらかというと主人公サイド寄りであるのに、
それを主人公らは把握せずに終わってしまっているのも勿体ないです。



テーマ

作中でも度々出てくる「自分の手の中にあるもの」です。


人の縁は不思議なもので今不幸でないのなら無理に現状を変えない方がいい、
人間関係だけでなく安易に今の環境を手放さない方がいい。


ただ、『運命』という表現を避けている様に、
巡り合わせを大切にしましょう、というメッセージではなく
自らが選択を積み重ねた結果今の自分があるからそれを誇ろう、
という主張が強く出ているように感じました。


ただこれが年寄り連中から出てくるのはわかるんですが、
20半ばくらいのあてながこの境地に達しているのは人生何週目なんだ疑惑があります。
もしかすると、あてなもアレクレピオスの使用経験がある?(ネタバレ反転)
人によっては一生、所謂『隣の芝生は青い』に囚われ続けると思うので、
覚えがある人は本作に触れてみるのも良いかもしれません。


伏線

今回は何度か「繋がった!」と思った直後にすぐ答え合わせを入れてきて
最後にまとめてひっくり返すのはナシかな?と思っていたら
いくつかは二重になっていて結局度肝を抜かれました。


グランドルートが何でこのキャラなんだ?と思いつつ始めてみたら
理解できたと同時にこれ以外ありえないな、となるので本当に凄い。


構成

最初から出ている3人は設定とかテーマを小出しにする形で、
グランドルートの踏み台のような作りなのは金色ラブリッチェと変わらず。
3人の中でも明らかに重要度が異なるのも同じで、
かぐや>虹夢>弥栄の順に根幹と関わりがあります。

かぐや

アレクレピオスとアンビシャスを巡る話で、
核心に近づきはしますが決着はつかず。

テーマが最もわかりやすい形で描かれていることもあり、
グランドルートの直前でやることをオススメします。

虹夢

他人の評価を人は数字を通してしか知り得ない、という話。
数値により可視化される「バズり」とギャルキャラの相性が良く、
実体のない数字が持つ意味のフォローの役割を持ちつつも
1本のシナリオとしてもまとまっている作りになっています。

弥栄

このルートだけは何を言いたいのか今一わからなかったですが…
熊の胆は別にアイヌ固有の文化というわけでもなく*2
自らの選択が齎した結果に対してのケジメと捉えていたのは石川母だけで、
効能的にもシリアスブレイカーだし周りに振舞っているしで違いそう。


コメディ要素

怪盗モノである以上ある程度お約束とは言え、
ザル警備との茶番劇以外でもおふざけの要素の頻度が非常に高いです。
大体以下の要素が原因。


・「わかったようなフリしてるけど実は全然わかってない」がしつこい
・外人キャラの常識の欠如が著しい
・クラスメートのキャラ付けが混沌としている


頭の回転が鈍いキャラを使って難しい話の説明を挟むことがあるんですが、
その役目は主人公と虹夢で足りていて他はわざわざ主張せんでいいような。
とも思いますが、全体的に頭脳派とそうでないキャラで二極化しているので
そういうコンセプトなのかもしれません。



おわりに

前回あんなことを言っておきながら、そこまででもなかったなみたいになりましたが、
シナリオが悪いわけではなく雰囲気が合わなかっただけと自分では感じています。
またライター繋がりで今月末に発売する「EVE ghost enemies」をやるので楽しみです。


次はFF10をやろうと思ってたんですが、リマスターが思ったより高かったので
とりあえずFGOの2部6.5章やってからまた考えます。

*1:概念的な意味の時間ではなく、数値として可視化された時刻に近い

*2:そもそも石川家が先住民の末裔というわけでもなし