「星空鉄道とシロの旅」に続き、同じ人のライター買いです。
ぱっと見はありがちなギャルゲーに見えるので本当に面白いんか?と
思いつつ購入しましたが完全に杞憂であったと先に記しておきます。
とりあえず、他ゲーや別のメディアでさかき傘氏に触れて評価している人や、
気になっている人はこの記事読む前にプレイしてください。お願いします。
丁度作中の時期も11月~12月なのでこれから始めるとちょうどいいです。
概要
タイトル | 金色ラブリッチェ |
開発元 | SAGA PLANETS |
ジャンル | ビジュアルノベル |
機種 | Win/Steam/Switch/PSVita/PS4 |
発売日 | 2017/12/22 |
傾向 | 学園、ノブレスオブリージュ |
プレイ時間 | 約20時間 |
総評 | S |
テーマ
タイトル自体は過去にヒロインらと仲良くなるきっかけとなった
ラブリッチェマーク(チョ○ボールのアレ)そのものを指していて、
これ自体も作品の中で重要なファクターとなっているが、
「金色」そのものが本作のテーマとなっている。
ステイゴールドやゴールデンタイム等の言い回しがある様に、
抽象的な表現をすると「輝き」、平易な表現に置き換えると「最高の状態」が
登場人物各々にとって、それがどのような意味を持つか、が見所。
単純に色としての意味も様々な要素に絡んでおり確たる主題となっている。
貴重な時間を無駄にするな、と言った趣旨の訓示が度々出てくるので
学生時代を無為に過ごしがちだった人に刺さる内容でもある。
シナリオ
舞台となるノーブル学園は、名が表すように御曹司が多く通う学び舎だが、
自主性を重んじる制度が存在し各分野の金の卵も特待生の様な形で多く在籍する。
その性質上、成り行きで入った主人公を除く登場人物のほとんどが
何かしらの強い目標ないし責務を持っていて、
それに対して主人公がどう向き合っていくのか、を中心に話が進む。
システム
普通のノベルゲーム。プロローグが丸ごと共通部となっているため、
2度目以降はタイトルから直接各シナリオに移行可能で既読スキップを見守る作業は不要。
選択肢はかなり少ないながら存在するもののシナリオ分岐には影響しないが、
CGコンプには全部選択する必要あり。
評価
総合評価
メインヒロインとグランドルートのシナリオが対比になってる構成も、
日常生活の部分を退屈せずに読ませるテキストもかなりのものですが、
やはり何といっても巧みを越えて異次元の域にある伏線の扱いが凄い。
ミスリードを誘う様な作りではないですが、とにかく細かい部分や
お約束と言える部分も含めて物語の根幹に繋がっていているし、
妙に含みを持たせて終わる本編が終わって別枠扱いのグランドルートを開始した途端、
怒濤の伏線回収が始まるのに新たな謎も出てきて止まらなくなりました。
主人公と理亜、玲奈の言葉が砕けすぎという点は注意した方が良いかもしれません。
と言っても身なりや言動がしっかりしてるキャラクターとの対比になっているし、
ビジュアルノベルは小説調よりも口語的なテキストで情景描写も端折ったり
主観が混じったりの方が良いと最近感じているので個人的にはプラスです。
ノベルはA+が最高とか言っていましたが、
妙な拘りで評価を下げるのは失礼なので思ったままつけました。
後は個別に見どころと申し訳程度の不満点をつらつらと。
以下ネタバレ厳重注意です。
気になっているorやる予定があるのにここまで読んでしまった人は引き返しましょう。
シナリオ構成
グランドルートのヒロインである理亜を除き、
メインヒロインであるシルヴィアとそれ以外、の構図がハッキリとしています。
ヒロイン毎に関わる人物が変わったり舞台を移したりと言ったことがほとんどなく、
純粋に恋愛対象となるのが誰かと、主人公の行動の変化のみに焦点を絞っています。
何か決定的なイベントがあってなし崩しにではなくて、
主人公が自分の感情に整理をつけてちゃんと交際を申し出るのがほとんど。
この様な構成から、グランドルートが各シナリオの集大成になっているわけではなく、
極論を言うと、サブヒロインの話は全部スキップしてしまっても話は通ります。
(勿論、細かい伏線や設定に気付けない等はあると思いますが)
若干の例外が妃玲奈で、以下の点から少し特殊なシナリオになっています。
・主人公の過去に関するイベントがある
・ヒロイン側に行動を合わせない
詳しくは後述します。
各シナリオの特徴
シルヴィ
架空の親日国の王族。
この手のキャラの例に漏れず出生・経歴に一癖有り。
と言ってもそれがメインの話になるのはエルの方なので、
こっちは主人公が覚醒してサクセスストーリーを突っ走る感じです。
途中、主人公が誘いを断り続ける場面があって少しだけ嫌な予感がしましたが*1、
流石にそういう方向に流れることはなかったので安心。
このシナリオだけでも一応決着はしているんですが、
全体から見たポジションが重要で、「まだ何かありそうだな」から
何かどころではない展開が待っています。
スペックは非常に高いが奔放な性格なので王室の方は苦労してそう。
表情豊かな健啖家なので見ていて楽しいです。玲奈とはいいコンビ。
エル
ソルティレージュ王室の内紛がより詳しく語られる、
くらいしか特徴がなく、シルヴィの補足の面が強い。
ラストは男前なシルヴィが見られるので一見の価値あり。
弄るとポンコツになりがちな堅物キャラ。
このシナリオの理亜はやっぱり乳かーみたいなこと言ってますが、
内心めっちゃ困惑してると思いますね…
玲奈
前述の様に、このルートだけサブヒロイン内では異色で、
ヒロイン側の行動に引っ張られずに主人公が主体で進みます。
過去のトラウマに唯一決着をつけていることと、
安定した将来設計を成就させていることが特徴。
と言うのも、玲奈のサポート能力が抜きんでているため
「平均的に生きることが最も難しい」を成し遂げられています。
作中で「本当の自分」について悩むシーンがある様に
主人公自身も周りに合わせがちな性格ではあるものの、
玲奈はそれを超えて気配りの権化なので似た者同士というか。
行動を起こすかさりげなくフォローするかでタイプは違いますが。
砕けた言動やスラング、下ネタ、ウザ絡みと一見めんどくさい奴ですが
時と相手を選んでわざとやっているのでこいつなら許せる、
みたいな良いキャラです。
茜
攻略対象の中で唯一金髪でないことからもわかる様に、
サブヒロイン内でも明らかに脇役扱いされていて
本筋にまったく絡んでこない上にそもそも話が短い。
一応、主人公が過去を乗り越えないながらも
スポーツと向き合っていく内容ではあるので無価値な訳ではないですが…
GOLDEN TIME(グランドルート)
全体の構成とか繋ぎ方が凄いので、これ単体で語ることはそんなにないんですが、
理亜が日没の瞬間を毎日眺めるほど好きなことに込められた意味が色々あったりとか、
やたら金髪多いのにもそれぞれ意味があるのとか仰天します。
終わり方もめちゃくちゃ綺麗なのにエピローグが蛇足になっていないどころか
こっから更にブーストするのかと感嘆するしかないシナリオになっています。
演出面
タイトル回収
指輪が入ってた箱に入ってたのが実は金のマークだった、というオチが
プロローグでかまされて風化しかけた頃にシルヴィが金のマークを引き当てて
「これは…!」って思ったらやっぱりやってくれました。
お約束な演出ではあるものの、1回目を思い違いに対するオチとして使っておいて、
2回目はしんみりしたシーンとなるので使い方が完璧です。
エピローグ
本編中の会話から理亜は存命のまま終わると思ってましたが、
エピローグに入った途端、セピア調+立ち絵が出ない演出で察しました。
死をお涙頂戴の演出に使われるのが嫌いと本人が言っていた様に、
本編中はあくまでゴールデンタイムのままであるのが粋ですね。
この手のは本編最後でそういうシーンを描いてスタッフロールでしんみりさせて、
エピローグで何かをきっかけに思い出す、みたいにすることが多い気がします。
不満点
不満点というか話の出来が良すぎるので、些細なこととか釣り合ってない部分ですが。
オープニング(タイトル)BGM
本編はサクセスストーリーなので良いんですが、
GOLDEN TIMEはしんみりした終わり方になるので
終わった後にイケイケな曲流されるとうーんとなりますね。
よくあるコンプ後はタイトル画面変えるとかあってもいいのでは。
BGM
酷い使われ方してるとかはないですが、単体で耳に残る曲はほとんどありませんでした。
「Goleden Time」は良い。
*1:長森の悪夢