概要
タイトル、パッケージから想像がつくように和風な世界観を持つ作品です。
ただし天人(異星人)との戦争を経て発展した近未来が舞台。
主人公らは『サムライ』と呼称されていますが、中世日本に存在した武士とは別物。
『星戦』と呼ばれる、競技色の強い1vs1の白兵戦を行うプレイヤーを指しています。
この星戦で武器化した生物を獲物として戦うため、収集育成ゲームの要素を併せ持ちます。
評価
光る要素はあるものの、非常に惜しい作品。
設定や戦闘システムにユニークな部分はあるものの、活かしているのは終盤になってから。
敵幹部との最初の戦闘があるまで、基本的には以下の作業の繰り返しです。
手助けしてくれたキャラが実は重要人物だった等の伏線もなく、戦闘システムを効率的に学べる様になっているわけでもなく、この段階では「ちょっと独特な設定を持っている代わりに戦闘がつまらなくなったポケモン」でしかありません。
青森*3のイベントで初の敵幹部戦、次の札幌で当代の主戦力が出揃って、やっと魅力的なキャラクターが増えて面白くなってきます。
しかし、この辺りから局所的に難易度が高くなる部分があり稼ぎが必要になることと、枠の問題等の収集ゲームとしての欠点が噴出し始めます。
まだ「ここまで耐えれば文句なしに面白い」と言えるほどではありません。
そのくらい面白いと感じられるのはラストダンジョン突入の前辺りから。
RPGをやり慣れているとシナリオとしては予想の範疇に収まる内容ではありつつも、本作の設定・システムを活かした展開・演出がされていて見応えがあります。
具体的には、以下の様な部分。核心の部分のためネタバレ注意の反転。
- サムライとして今まで戦ってきたキャラクターがヤイバとなり振るわれる方に回る
- 本当のラスボス戦で貫通攻撃が必須、その補助として白のガイストが存在する
後はカットインはかなり気合の入った出来。
まとめると、
- モンスター収集タイプのゲームとして見た場合は、類似する作品に見劣りする
- ストーリー前半の盛り上げ方に難がありバランスが悪い
- ラスト付近のシナリオには見るべきところはある
単に面白いかと問われると何とも言えないですが、やって良かったかだとYESにはなるかな、という感じです。
後はポケモンの偉大さをよく理解できる作品でもあります。
ワンポイント攻略
- 水の上を歩けるようになったら、すぐ長野の忍者屋敷に戻ろう
経験値2倍の神器(アクセサリー)の効果が絶大。
- 育てるエクスは技の最大数が多い奴にしよう
成長で増えないので、技数4以下のヤイバは中々悲しいことに。
- 最初の3匹でネコマタは非推奨
序盤から地属性のエクスはたくさん出てくるのと、防御タイプで使いにくい。
データ
タイトル | Samurai Evolution 桜国ガイスト |
開発 | TAMTAM |
ジャンル | ロールプレイング |
発売日 | 2002/09/20 |
プレイ時間 | 約15時間(※) |
総評 | B+ |
※ながらでレベリングをしている時間が長かったのでかなり曖昧。
ストーリー自体は非常に短いので、やり方次第では10時間に収まる可能性が高い。
価格の高騰
近年急激にGBAソフトの価格が上がってきており、この作品も煽りを受けています。
現在美品だと13000円、状態難で9000円、裸ソフトで5000円くらい。
ちなみに定価は5980円。2007年時点では1000~2000円、2021年時点で5000円くらいだったらしく、ここ数年での上がり方が凄まじい。
レトロゲーバブルで上がりすぎな気もしますが、シリーズ物や大企業が版権持ってるタイトルと違い配信やリメイクには期待できず、ここからまた落ち着くかは予想できません。
一旦こういう状況になってしまうと、ゲーム好き以外に投機目的の輩も噛んでくるのでしばらくは続くと思われます。
タイトルにあるガイストって何?
自分の知識としては、アルカナハート3で人造聖霊をこう呼んでいた=独語で霊的な存在、くらいでした。ゲーム開始前は霊的な存在と協力して戦うと想像していましたが全然違っていたので、タイトルについて考えてみました。
{参考:ヴァイス|キャラクター|アルカナハート3 Love Max!!!!!}
英語での発音が近いghostよりもspiritに近いようで、正負の概念から外れて超自然的なイメージ、とのこと。ポルターガイストのガイストで、日本だと心霊現象として扱われることがほとんどだと思いますが、元々は物理的に説明できない現象を幅広く指す、らしいです。
作中でこの単語が含まれるのは、作中の鍵でもある『白のガイスト』。
その説明には、「世界を救うための究極の歌唱術」と書いてあります。
何を言ってるか意味不明だと思いますが、本作ではヤイバを使った攻撃とアイテムの使用以外に、歌唱術を用いてサポート行動を選択ことができます。野良のエクスを仲間にする場合も、これを使用して心を通わせる設定になっています。"愛"が属性として扱われるまでに強調されていたり、意志を持つ生物であれば誰でも武器として戦うことができたり…
強い意志(によって引き起こされる現象)を総称してこう呼んでいる、という結論です。
日本語で言うところの〇〇精神とかスピリッツみたいな感じですかね。
確かにこれだと今一かっこがつかない気も。
特徴
- 独特な世界観・設定
- モンスター収集ゲームとしては未熟
- 戦闘は雰囲気で楽しむしかない
用語
名称 | 説明 | 対応 |
星戦 | 円卓で行う1vs1の決闘。 | バトル |
サムライ | 星戦で戦う天人・人間・エクス。 | トレーナー |
ヤイバ | サムライが装着する天人・人間・エクス。 | モンスター(手持ち) |
エクス | 超越種。主に捕獲対象となる野生のヤイバ。 | モンスター(野生) |
覇気 | 気力。ヒットポイントと技ポイントを合体させた数値。 | HP+PP |
エクスは種族で、サムライとヤイバは役職。
敵として戦ったサムライ(エクス)がヤイバとして加入することもあります。
エクスは〇〇人とか〇〇類という様な分類ではなく、それらが超越した種族の総称。
エクスの中でも超人やら機械生命体みたいな分類があります。
独特な世界観・設定
概要と評価でほぼ書いてしまいましたが一応。
和風+近未来の雰囲気
『桜国』と名を変えた日本が舞台。
建物の形状や『世界樹*4』から未来が舞台であることがわかります。
桜の樹がそこかしこに植えられていますが、吹雪の中でも満開なので本物でない可能性大。
星戦の果たす役割
一方、未来でありながら機械的な兵器やロボットの類はまったく登場しません。
暴力的な解決手段はすべて『星戦』によって賄われます。
(天人により引き起こされた戦争が悲惨なもので、組織間の争いは競技的な代理戦争にシフトした、とも解釈できます。)
星戦の際にサムライはヤイバを武器化させて戦いますが、ヤイバになれる条件が「星剣化を心から望めば誰でも」。
特定の種族が武器化する等の作品はたまに見ますが、"誰でも"であるのがポイント。
モンスター収集要素
デザインは類似作品と差別化できていてニッチな需要がありそうです。
重要な要素である、収集と育成に楽しみを見出しにくいのが問題。
エクスのデザイン
デザイナーの趣味なのか、火属性に人型+虫、水属性は宇宙生物だったりやたら巨大な生物が多い等、独特な雰囲気があります。
これ以外でも、メカっぽいのが妙に多かったり、邪眼のオボロ(敵幹部)が"癖"に刺さるデザインだったりと、決して万人向けのデザインではありませんが、好きな人はこれだけでも価値がある尖り方をしています。
収集の問題点:所持枠の少なさ
少し調べた感じ散々言われていますが、所謂ボックスの枠があまりにも少ない。
手持ち6匹+控え15匹の21匹がMAX。
属性*5は5種類と少ないものの、図鑑に登録される種類は107匹とそれなり。
(ただし、黒白*6でほぼ色違いなだけのエクスも結構いるので、体感はもっと少ない)
超過した場合は当然逃がす必要がありますが、逃がす時の選択画面で詳細が確認できません。
加えて、勝手にニックネームをつけられる関係で名前から誰なのか判別が難しい。
(一応、歌劇蛙→オペラみたいな感じでそれっぽい名前がつくことが多い)
固定入手のヤイバもいるのでそれを逃がしてしまわないか、ストレスの原因になっています。
育成の問題点:超越(進化)の難解さ
クリアまで通して自力で超越させたのは最初にもらったネコマタのみ。
超越するエクスがレアな存在なのかと思いきやそうではなく、
- 超越する条件を自力で見つけるのが難しい
- 超越前後で別物になっていて関係性に気づきにくい
である模様。
後者はそうする意味がある場合は全然アリだと思います。
見るからに何かの幼生だったり、『コイキング』の様に戦力として大化けするパターン等。
ただそういう必然性が特になく植物から動物に変わったりする上、初登場のエリアで超越前と後が普通に出てきたするため、図鑑で並んでいても出現地域が同じだからかなぁくらいで気付かないことも多いです。
進化後の姿を想像して楽しむということがほぼできないのはこの手のゲームではかなり痛い。
戦闘システム
覇気と貫通攻撃が独特で、それ以外はポケモンとほぼ同じ。
CPU戦がほぼゴリ押し運ゲーなので、多くの場合その特徴もあまり意味を成していない。
サムライとヤイバの覇気の関係
最大6匹のヤイバをパートナーとして戦闘を行いますが、それを操るサムライの方にも覇気が存在します。
ヤイバと異なり技の使用時に消費されることはない*7ものの、ダメージが貫通することがありヤイバとサムライが同時にダメージを受けます。
相手の手持ちを全滅させる以外にも、本体にダメージを貫通させてKOする方法を採れるというのが特徴的。
攻撃する際に覇気を使用するのも特徴的。
この消費量は覇気の最大値の割合になるため、一体だけを育て続けることができない作りになっています。
こまめに回復アイテムを使えば一応はできますが、デザインとしては行動力の様なイメージ。
戦闘システムの問題点1:行動順に運要素が絡み、育成もしにくい
素早さに依存しているのは確かなんですが、結構乱数の影響を受けます。
お互い2発で相手を倒せる時等、かなり運要素が強くなりがち。
また、交代とアイテム使用も通常の行動と同じ優先度で扱われます。
低レベルのヤイバを育成しにくいという問題があったり、
初手で不利対面だった場合に問答無用で一発もらうことも。
戦闘システムの問題点2:属性相性があまり機能していない
有利相性でもポケモンの抜群ほどにダメージは伸びません(1.3~1.5倍くらい?)。
代わりにヤイバへのダメージの1/3~1/2ほどがサムライにも入ります。
ただし、最初から貫通を狙うのであれば、貫通効果つきの技を使う方が効率が良い*8。
また同様に、相性が悪くても半分までは軽減できません。
加えて、属性は1つなため1/4にできない、無属性は軽減できない、効果無しのパターンがない、と前述の行動順の問題を含めて基本的に"受け"が成立しません。
"愛"属性*9が圧倒的に使いやすいですが、流石にそこは入手機会が限られていて一応バランスは取れています。
そもそも見た目からタイプがわからないことが多い、というのはこの手のゲームが抱えがちな問題ですが、本作は武器の形態になると更にわからなくなる問題があります。
無属性や貫通でのゴリ押しを後押しする一因になっていそうです。
戦闘バランスの問題点:ボス戦が白熱したものになりにくい
強敵が相手でも、上手くハマると敵が無駄な交代を繰り返して簡単に勝ててしまうことがあります。
2回攻撃しても倒せない状況でも、こっちが先に攻撃すると交代→次のヤイバに攻撃→交代と繰り返し行われて一気に戦力を削れることがままあります。
逆に此方が劣勢に回ると、1体犠牲にした上で次に出した有利属性のヤイバが奥義をくらって挽回できなくなったりと、戦力差に関係なくワンサイドゲームになることが多い印象でした。
おわりに
特徴的な要素を複数持ち、それらは良い影響を与え合っているのにそれ以外が足を引っ張り…という感じの作品でした。
収集+育成ゲームというジャンルに拘らなければ素直に雰囲気とデザインを楽しめるのかも。