げーむろぐ

クリアしたゲームの備忘録。RPG/アクション/ADV/ノベルがほとんど。

「ドキドキ文芸部プラス!」― 怪作の皮をかぶった意欲作

最初は熱心に推してる人が言葉遊びが云々言っていたくらいでしたが、
じわじわタイトルを目にすることが増えてどうもホラー方面で強烈なゲームらしい、
というのとビジュアルノベルゲーマー向きということの様でやってみました。

ポップでキュートなタイトル画面

実際にプレイ前に聞いていた内容は一応全部当てはまるもので、
ネタバレを避けて勧めようとするとそういう言い方になるか、という感じです。
キワモノとしての面が際立ってしまっていますが、
TrueEndの後に表示されるメッセージからもわかる通り、
「ノベルゲームにおいてプレイヤーとゲームがどう関わり合うか」に
真摯に向き合った作品であると感じました。



概要

タイトル Doki Doki Literature Club Plus!(ドキドキ文芸部プラス!)
開発 Team Salvato
ジャンル ビジュアルノベル
発売日 2017/09/22(無印PC版)
2021/06/30(プラス英語版)
2021/10/07(プラス翻訳版)
傾向 文学、サイコホラー、メタフィクション
プレイ時間 約8時間*1~約16時間*2
総評 A+

ノベルゲームとしては珍しく(?)、米国の開発チームによる作品です。


評価

冒頭で既に語ってしまいましたが、
よく紙芝居等と揶揄されるノベルゲームを刺激的なものにするにはどうするか、
というところから出発して舞台の作り自体を特殊なものにしています。
作中でモニカが言及している以外にも、非常に短いストーリーや選択肢の持つ意味等、
様々な意味で旧来のノベルゲームに対するアンチ要素が存在するのもその一環。


システム面では事実上一本道のノベルでありながら
遊べるように作られている非常に異質な作品です。
分岐によるシナリオ変化とシステムが融合して高い完成度を誇っている作品に
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がありますが、
衝撃の受け具合ではいい勝負かもしれません。


単純に面白いかと問われると好みが出ると思いますが、
読み物ゲー史に残る作品だと思うので、その手の作品をよくプレイする方は是非。
捻くれの境地みたいな作品なので、もやもやした終わり方になるんだろうな、
と思っていたらTrueEndはかなり綺麗に終わったのも〇。



特徴的な要素と、ネタバレを含む話題について個別に記載します。



詩自体の出来不出来はあまり明るくないので正直判断しかねるんですが、
様々な情報がこのシステムに凝縮されています。

短いストーリーの中で詩の作成によりストーリーの細かい分岐を制御して、
ヒロイン側の詩で性格や心情の変化を表しているのは
文芸部の設定を活用している素晴らしい作りだと思います。

詩の作成画面。作成と言ってもワードを選ぶだけの簡単なシステム。

また、狂気を感じさせるとまで行かないまでも
微妙に違和感を覚える様な詩から
不穏な空気を醸出するテクニックも上手いです。


プラスではサイドストーリーでより細かく
キャラクターの性格が掘り下げられているため、
文学(芸術)としての側面が強く出ている様に感じられます。
実際、詩を流し読みで本編をクリア→サイドストーリーを読む、
でも特に問題なく理解はできます。


しかし元々は本編だけの情報から推測しなければならなかったと考えると、
結構な密度を持っているシステムだと言えます。
詩の内容や書体もそうですが、どのワードにどのヒロインが反応するかも重要です。
暗めのワードでユリを狙ったつもりがあれ?となると
それが伏線にもなり気持ち悪さを感じさせる要因にもなっています。



ホラー要素

特段強烈なシーンは存在しないんですが、
不意打ちで不気味な演出が差し込まれることが多いです。


ショッキングなシーンやメンタルヘルスに踏み込むシーン自体はありますが、
その部分に関してはわざわざ警告するほどか?というレベルです。
(元は米国のゲームなので、その辺りの規制や問題視される可能性の考慮かもしれません)

特徴的なのが不気味な演出の方で、
単純に怖いというより何となく気持ち悪かったり、不安になる様なものが多いです。
わざと隙を作ってプレイヤーの好奇心を利用したり、低確率にランダムで発生したりと
起こるのが唐突なのでそこは注意しておいた方が良いかもしれません。


わかりやすく印象的な要素であるため目を引きやすいですが、
設定上の意味としてはメタフィクション要素の伏線というだけです。
ただ後述するファイルシステムとの結びつきが強く、
本作を特異な作品たらしめている要素であることは間違いありません。





以下、重大なネタバレを含むため未プレイの人は見ないことを推奨します。














ファイルシステム

起動後の背景やUIがあまりにも無骨なことから想像できるとおり、
言わば、「ゲームを管理するシステムを内包するゲーム」で、
ノベルパートを構成するシステムファイル*3に直接介入することができます。
ゲーム内のキャラクターもファイルを操作する権限を持っているため
途中で壊されたファイルをどうにかしないと進めない状態に陥ります。


これがかなり曲者で、ゲームの進行度等に応じてファイルの権限が変わるので、
ゲームの途中で色々試して何もできなかったから、となって詰みかけたり、
バックアップを取らずに消したり初期化していいのかと悩んだりする羽目になります。
それが楽しいと言われるとうーん… 職業病でしょうか。
ただ自分がPS5でやっていたからで、PCだと好き勝手にバックアップを取ったり、
本来開けないファイルを開いてバイナリ解析したりできるようです。


また、本編とは直接は関係ないものの開発の裏話的な話が隠しファイルで見れたり、
シナリオの進行度に応じて一時的に奇怪なファイルが出来たりするのは
中々手が込んでいて周回を飽きさせない作りにはなっているなと思います。



モニカ

どう考えてもお前が1番やべーやつじゃん、と思わせてからの
管理者権限持たされて狂ってしまっただけで、
本人が全否定していたゲームのキャラクターそのものでした。

モニカというキャラクターに対する認識が変わると共に
プレイヤーの本作への関わり方を考えさせられる良いキャラだと思います。
(そうは言いつつ2回も初期化するともう感覚が麻痺して何も感じないわけですが…)

*1:サイドストーリー読破まで

*2:おまけコンプまで

*3:正確には、システムファイルに見せかけたファイル群