「夏ノ終熄(ナツノオワリ)」― 終末モノ+サバイバルとしては見どころアリ
夏が舞台のゲームを探していてお誂え向きな作品を見つけたのでやってみました。
あらすじにもある通り、
パンデミックによる終末モノ、の一歩手前の様な状態の世界が舞台です。
ロープライス*1なのでかなり短く休みの日1日やれば終わるくらいの短さです。
概要
タイトル | 夏ノ終熄 |
開発 | CUFFS |
ジャンル | コマンド選択式ADV |
発売日 | 2022/08/26 |
プレイ時間 | 約5時間 |
総評 | B+ |
伝染病の爆発的な流行により30歳以上の人間がほぼ死に絶えた中で、
既に持っていたものを駆使しての自給自足に迫られている主人公のもとに
街から逃げて来た少女「ミオ」を介抱することになり
いつ自分たちも発症するかわからない状況の中で2人の生活が始まるが、
主人公はしきりに栄養面の問題を気にしていて…という感じです。
本作は短いこともあり伏線やらネタバレやらが重要な作品ではないので、
複数あるエンディングの順番なども総評の部分に書いてしまっていますので
ご注意ください。細かい展開や演出までは書いてません。
評価
総評
非常に短いながらも焦点を2人のみに絞ることで細かい心境の変化を描けていて、
特にバッドエンドの展開は声優の演技も含めてかなりのクオリティだと思います。
また、曲数も少ないながらピアノを中心とした楽曲との相乗効果も中々。
一方で、サバイバル要素が強すぎてそれ以外が薄くなってしまっています。
タイトルは終末モノと夏の終わりをかけているんですが、
終末モノとしては他のキャラクターが一切登場しないため
殺伐とした感じがまったくなくどうしても臨場感に欠けていて、
夏らしさもあまり感じられませんでした。
システム的には好感度を管理する受け答えの選択肢と、
栄養面を管理する行先(で何を採取するか)の選択があります。
栄養が偏ると伝染病の発症が抑えられなくなる様になっていて、
初回は必ずバッドエンドになり、一度それを見た上で
生き残るエンディングにたどり着くことができます。
これによりノベルゲームではなくADVらしさが出ていて、
好感度による分岐の後に栄養面の状態の二段構えでの
エンディング分岐となっているのは面白い試みだと感じました。
終末モノとして
ミオの口から生き残った人々がどうなっているか少しずつ語られていくのは
このボリュームの中で世界観の説明と心の開き具合を両方こなせる
悪くない手法だと思いますが、イマイチピンと来ませんでした。
回想で振り返ってもらうだけでも大分違ったと思いますし、
それならいっそ本当に2人だけの世界の方が、等々思うところはありました。
前述のとおりバッドエンドは唯一終末モノらしい終わり方をしていて、
克服エンドではギリギリ免れた状態になり他の生き残った人たちと
交流していく様子が描かれていて納得のいく終わり方になっています。
しかし一番理想的に運んだTrue(っぽい)生存エンドではその辺が何もなく、
一生2人で過ごしていこうね見たいな感じでぼんやりした終わり方になっています。
当初の栄養危機に農作物の収穫が間に合うにしても
現代の道具使わないと2人でやってけるはずがないし、
克服エンドの方では触れられていた今後の展望みたいなものが
曖昧にされていてこのシナリオだけ取ってつけた感が否めませんでした。
ここが良ければもう少し評価高くなると思います。
夏要素
夏要素は河で泳ぐシーンがあるのでそれくらいで、
自給自足なので夏らしいイベントや食べ物、電化製品等がほぼ登場せず
うだるような暑さを感じるシーンもないので5~9月くらい?としかわからないです。
「夏」のイメージが上記の要素に依存し過ぎている面もありますが、
似たような作品に『夏の終わりのニルヴァーナ』や『黄昏のシンセミア』があり、
こちらはしっかり季節を感じることができていました。
前者は彼岸花、後者は暑さの描写と楽曲によるイメージが大きいので、
本作は別に夏を押し出しているわけではなく発売時期とかぶっただけ?かもしれません。
どちらも大昔に超常的な存在とのかかわりがあり『AIR』とも結びつくので、
そっちからのイメージの伝播もあるかもですが。
栄養管理システム
これは中々面白い試みだと思います。
早い話がタンパク源を確保できないと死ぬ、なんですが、
くくり罠を仕掛けるタイミングでエンディングが分岐します。
ミオが毎朝お肌と髪のチェックをするんですが、
そこでの微妙な違いから栄養状況がわかるようになっていて
何回かやり直しても未読テキストが出てくるのが
細かい部分作られてるなと感じます。
ただ他のタンパク源(昆虫やカエル等)が単なるタンパク質が重要であることの伏線扱いで、
これらがほぼ無視されて鹿肉食えるかどうかだけなのはどうかとは思いました。
(実際量が違い過ぎるのと、ロープラなのでそこまでというのは当然あるにしても)
おわりに
突発的に何となくで手に取った割には見どころがあって楽しめました。
やはり自分にはズルズルと日常パート続けられるより、
こういうタイプの作品の方があっている様な気がします。
*1:商業のPCゲー内での呼び方、言うほどローではない