げーむろぐ

クリアしたゲームの備忘録。RPG/アクション/ADV/ノベルがほとんど。

「EVE ghost enemies」― 話を大きく広げながら過去作へのリスペクトが随所に感じられるEVEシリーズ最新作

クリア自体に要したのは4日足らずとかなりのめり込んでしまったんですが、
その後諸々あって記事に起こすのがかなり遅くなってしまいました。
本作ラストの問いかけに対する自分なりの答えが出せていないことも一因ですが…

この気合いの入りよう

EVEシリーズ最新作です。
burst errorに対するrebirth terrorと異なり、繋がってはいますが
前後編の様な作りにはなっておらず新しいストーリーが展開されます。
cross-claymore.hatenablog.com
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といってもEVEシリーズもいろいろ出ている中でかなり迷走していた、
というかburst errorの名前を借りて何とか売り上げを出そうとしていた印象が強く、
rebirth terrorでようやく報われたというファンが多い様で
私は他の作品に触れていないのですが…



一応本作だけでも話を理解できないことはないと思いますが勿体ないです。
少なくともburst errorはやらないとキャラクターの関係を掴むのに苦労するのと、
伏線となる部分で違和感を覚えにくかったりオマージュに気づけなかったりします。
burst errorをやる以上rebirth terrorやらない選択肢はないのでまぁ両方やってから。


後は軽く本作の感想漁った感じではEVE ZEROとは関係しているようなので、
今からやる人はこちらをやってみてもいいかも。
(やれる環境があれば)


概要

タイトル EVE ghost enemies
開発 El Dia
ジャンル コマンド選択式アドベンチャー
発売日 2022/06/30
プレイ時間 約20時間
総評 A+

評価

burst errorの直接的な続編であったrebirth terrorから一変して、
かなりスケールが大きくなり主だった舞台も変わっています。
例として、エール外国人学校は今回一切出てきません。
登場人物自体の数もそこまで多くはないものの勢力の数が増え、
複数に属するキャラクターも多いです。

といった具合に情報量が爆発的に増える中で、
ただ読み進めていてもテンポが良く面白く、
推理しながら進めていても気持ちよく気付かせてくれる
非常に完成度の高い作品となっています。


また複雑化したにも関わらずEVEシリーズのテーマを貫いているところと、
本作独自のテーマ『疑心暗鬼』を随所に散りばめられているところも高評価。
(後者はだからこそというか、このために複雑化している節もあり因果が逆かも)
前者が原因で数奇な運命を辿った人の行動が後者の原因となるケースが多く、
それぞれが独立しているわけではなく絡み合っています。
更に言葉遊びによる二重の伏線等も存在していて、
プレイヤー目線でも何が何だかわからない状態になることが多いです。


マルチサイトシステムについても前作以上にただ分かれているだけか?
と思わせておいて新たな切り口で驚かせながらも
burst errorの時のやり方を踏襲している箇所もあり、
EVEシリーズへのリスペクトを強く感じる出来となっています。
特に意味のない(ことが多い)奇行の選択肢も健在。


プレイしていて終盤まではS評価になるかと思っていましたが
エピローグが納得行くものでなかったので下げました。
ラストで全部持っていったrebirth terrorとの比較になりますが、
この終わり方でそれ以上の評価つけるわけには、という思いです。






いつもどおり、以降は注意して書いていますがネタバレ注意です。
特にやる予定の方は読まない方が良いと思います。
一応新作なので重要な部分は背景と色を合わせています。





EVEシリーズのテーマ

ファミ通のインタビューで「EVEシリーズのクローン技術を少し広げて、
人が生まれるとはどういうことか、さらに広げて親子の関係に踏み込んでいる」
とあった通り、作中様々なパターンの親子関係が存在していて、
本作初登場のキャラは大抵誰かしらと親子関係にあります。


関係が異なっていても向ける感情には違いがないことが多く、
血縁関係にある親子とそうでない親子の親側が似たようなことを言っていたり、
立場や利害よりも感情を優先するケースがまま見受けられます。

息子に対する親父の感情


子が夭折した親や、親にコンプレックスを持つ子が織り成すストーリーが最大の見どころ。
親子の絆に弱い人には特にオススメです。



マルチサイトシステムの新たな活用

クロスするまですれ違っているだけと思わせて実は、な工夫がされていてたまげました。
細かい部分を付き合わせれてみると結構早い段階でわかってしまうんですが、
今までまったく別の活用をしていたEVEシリーズならではの驚きと言えます。
自分は何か違和感あるなと思いつつ進めていて、
小次郎サイドで恵川陣が出てきたのが決定打でした。


冒頭での「大きな開き」というのが完全にロケーションのことだと思っていて、
実際すれ違いすらしないのはその問題が大きい様にも思える作りになっているので
田舎のオカルト事件から『ゴースト』になったこととの絡め方が絶妙です。


クロス後にも、burst errorを彷彿とさせる同じシステムに
同時にアクセスして切り替えながらでないと進めないシーンがあったりもして、
EVEシリーズとしての使い方としても力を入れてきたと感じる部分です。

お互いの操作が影響し合っているシーン


ただ、小次郎とまりなが直接対峙するときの
1歩ずつサイト切り替えるのはさすがにやりすぎです。
お互い見える位置にいる以上視点切り替える意味がほぼないし、
ようやくの邂逅というところで煩わしい思いの方が強かったです。



ブレイン

作中で各勢力が奪い合うことになる重要アイテムです。
これに関しても特に秘匿されたりミスリードを誘う様な設定開示はされてなかったんですが、
容量がとんでもなく大きい、シェリィがCIAとしてではなく個人での執着がある、
辺りで中身が気になりつつもよくわからんという状態のまま進めていて、
復元したら声が聞こえた瞬間全部繋がって震えました。


クローン、というか人体培養と遺伝に関する技術以外でも
SFらしさを上手いこと嚙み合わせてきたという印象ですが、
冒頭の演出含めての気付かせ方が素晴らしい。
パスワード入力にしてこれの正体が最重要事項であることを示すと共に、
本作のテーマを考えさせる作りも良いです。
…ただ設定の経緯を考えると正解はちょっとおかしい気がして、
MOMとかMOTHERとなるのが自然なのでは?とも思いますが、
留学経験あるからおかしくもない?うーん微妙です。



エピローグ

「人間社会はこういう物だけど君ならどうする?」みたいなメッセージだと思うんですが、
流れから想像すると次の事件発生ENDみたいな感じになっている様に見えて
中々後味の悪い終わり方したな、という印象を受けました。


アレが世界中にバラまかれているわけではなくて繋がりのある人にだけ
届いているのであればまた観方は変わってくるんですがどうなんでしょう。


何にしろスッキリとして終わり方ではなかったのでそこは少し残念です。



気になった細かい部分

ぶっちゃけ評価にはほぼ影響を与えてないんですが、
結構引っかかる部分はあったので一応載せておきます。

写真に写るレイスの表情

表情作るの下手なキャラではないと思うんですが、
写真の表情がどこがぎこちない様に見えます。
何か意味があるのかわからず、単に作画の問題にも思えますが…

杏子の成長

前作のラストで取引の強かさを身につけ始めたみたいな感じだったんですが、
特にそんなこともなくフィジカルの強さとまりなの突っ込み役として際立っています。
「ピンチ」という名前のとおり大ピンチを切り抜けるシーンで流れるBGMの担当は
今作このキャラなんですが、小次郎かまりなで使ってほしかったかなぁ、という感想です。

テキストミス

誤字脱字というレベルではなくキャラの認識が一定していないシーンがあったり、
結構重要な場面で数字が違っていたりも見受けられました。
1回発売日延期している経緯もありチェックし切れなかったんだろうなと思いますが
こういう作品なのでそれも何かしら意味があるのか、と余計な混乱を生むので
できるだけなくしてほしいところではあります。



おわりに

長々書きましたが、ADVのプレイスタイルに依らず楽しめる作品だと思いますので
rebirth terrorまでやっている方は是非、やっていない方はそちらから是非に。


長くなりすぎるので紹介しきれていませんが、
年配のキャラクターが多いので含蓄の科白や倫理的な話も多く、
かといって堅い雰囲気にはなっていないのは素晴らしいところです。